「空海と真言の名宝」を見学
先日、私が支部長を務める「日本石材産業協会 埼玉県支部」の勉強会として、上野の東京国立博物館へ足を運んできました。
動物園の手前にある、見慣れたあの大きな建物です。
今回の目的は、弘法大師生誕1250年記念の特別展「空海と真言の名宝」を見学すること。 普段はお寺の奥深くに安置され、特別な節目にしか公開されない真言宗の「秘仏」が一堂に集められるという、非常に珍しい展覧会です。
なぜ、石材店の集まりで仏像の展覧会を企画したのか。 それには私なりの強い思いがあった。
祈りの形を作る
私たちは石を加工して仏像を彫り、お墓という供養塔を作る。 いわば「祈りの形」を作り上げるプロである。
だからこそ、その大元となる本物の歴史や背景、そして造形美を自分自身の目で見て、肌で知っておくべきだと考えたのである。
本物を知らなければ、拝む対象を心から形作ることはできない。 表面的な技術だけでは、お客様にその本当の意義を深く語り継ぐことなど決してできないという思いからです。
さらに言えば、私が長年暮らすこの三郷という地域は、真言宗のお寺様や檀家様が圧倒的に多い土地柄です。 普段から触れ合う機会の多い真言宗の世界をより深く知ることは、地域の皆様の供養をお手伝いする上でも非常に大切な学びとなります。
展覧会をじっくりと見学した後は、ご縁のある住職を講師としてお招きし、今回の展示内容をさらに掘り下げた講演会も行っていただきました。
住職からの言葉
歴史や教えの解説も非常に勉強になったが、何より私の胸の奥に真っ直ぐに刺さったのは、次のような激励の言葉だった。
「石屋さんは、ただの石ころを売ったり動かしたりしているのではない。家族や大切な人を亡くした人々が、手を合わせ、涙を流し、心の拠り所とする『祈りの対象(お墓)』を作っている。それほど尊く、重い仕事を担っているという自覚と誇りを持って仕事に向き合ってほしい」
この言葉を聞いて、ハッとさせられました。
長くこの仕事を続けていると、目の前の作業をこなすことに追われてしまい、気がつけば単なる石の施工作業として扱ってしまいそうになる瞬間が、正直なところ無いとは言い切れない。 だからこそ、時折こうして立ち止まり、自分たちの手がけるお墓が持つ宗教的、精神的な価値の大きさを思い返す必要があるのだ。
今回の国立博物館での見学と講演会は、職人として、そしてお客様と向き合う人間としての初心に立ち返る、本当に充実した学びの場となりました。
半世紀以上見てきた地元の景色の中で、これからも一つひとつのお墓づくりに誇りを持って向き合っていきたい。 あらためて背筋がすっと伸びるような、そんなありがたい一日でした。